片付けは、
売れるものから抜く
部屋の順に手をつけると終わりません。先に売れるものを抜くと、処分する量が減って費用が下がり、売れた分も入ります。
「どこから手をつければいいか分からない」の答えは、部屋ではなく“物の種類”です。片付け業者の費用は間取り=量で決まります。だから売れるものを先に抜けば、処分する量が減って費用が下がり、そのうえ売れた分が手元に入ります。順番を逆にすると、値の付くものごとトラックに載ります。片付けで最も多い後悔は「よく分からないまま捨ててしまった」です。価値の判断を、自分で下す必要はありません。
そしてもう一つ、先に知っておくことがあります。実家には法律が定めた期限が4つあります。相続放棄が3か月、相続税の申告が10か月、相続登記が3年、そして空き家の3,000万円特別控除が相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。「四十九日を過ぎてから」と待っていると、最初の3か月が過ぎます。家を売るなら中を空にしないと着手できないので、片付けの期限は、実際には3,000万円の控除の期限に引っ張られます。
実家には期限が4つある
「実家の片付けはいつまでに?」を調べると、たいてい「四十九日を過ぎてから」「作業は3日〜1週間」という答えが返ってきます。それは作業日数の話で、期限の話ではありません。法律が定めている期限は4つあり、いちばん遠いもので3年です。どれも、過ぎると戻せません。
実家に関わる4つの期限
| いつまで | 何の期限か | 過ぎるとどうなるか | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 3か月 | 相続の放棄・限定承認 | 借金も含めて引き継ぐことが確定します | 民法第915条第1項 |
| 10か月 | 相続税の申告・納付 | 無申告加算税・延滞税の対象になります | 相続税法第27条第1項 |
| 3年 | 相続登記の申請 | 正当な理由がなく怠ると10万円以下の過料 | 不動産登記法第76条の2、第164条第1項 |
| 3年を経過する日の属する年の12月31日 | 空き家の3,000万円特別控除を使って売ること | 控除が使えなくなります | 租税特別措置法第35条第3項 |
起算点はそれぞれ違います。3か月と10か月は「相続の開始があったことを知った日」から、相続登記の3年は「所有権を取得したことを知った日」から、空き家特例は「相続の開始があった日」からです。
この4つのうち、片付けが直接効いてくるのは1つめと4つめです。1つめは「売る・捨てる・譲る」が相続の承認とみなされ得るから(後述)。4つめは家を売るには、中の物を出し切らないと売れないからです。
1年遅れると3,000万円の控除が消える
租税特別措置法第35条第3項は、いわゆる「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除」です。相続した実家を売ったときの利益から、最大3,000万円を差し引ける制度です。
条文が定めている期限は「当該相続の開始があつた日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日まで」。丸3年ではなく、その年の年末までです。
いつ亡くなったかで、期限が変わる
| 相続の開始 | 3年を経過する日 | 実際の期限(その年の12月31日) | 使える期間 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月10日 | 2029年1月10日 | 2029年12月31日 | 約3年11か月 |
| 2026年6月30日 | 2029年6月30日 | 2029年12月31日 | 約3年6か月 |
| 2026年12月20日 | 2029年12月20日 | 2029年12月31日 | 約3年 |
年初に亡くなった場合ほど猶予が長くなります。逆に年末に亡くなった場合は、ほぼ丸3年しかありません。自分のケースがどちらかを先に確かめてください。
控除が使えるかどうかで、税額はこれだけ変わります。実家の売却で出た譲渡所得が2,000万円だったとして計算します。
譲渡所得2,000万円・相続人1人の場合
- 期限内に売った(特例あり)2,000万円 − 3,000万円 → 0円
- その所得税(措法31条1項の15%)0円
- 期限を過ぎて売った(特例なし)課税される長期譲渡所得 2,000万円
- その所得税(2,000万円 × 15%)300万円
差は300万円です。これに加えて住民税と復興特別所得税がかかるので、実際の差はこれより大きくなります。期限を1日過ぎるだけで発生します。
所有期間が5年を超える長期譲渡所得の所得税の税率は、租税特別措置法第31条第1項が100分の15と定めています(その年1月1日において所有期間が5年を超えるもの)。住民税と復興特別所得税は別にかかります。
この特例には、期限のほかにも条件があります
- 家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたものであること(措法35条5項1号)
- 売るときに取り壊すか、耐震基準に適合させること
- 相続の直前に、その家に被相続人が住んでいたこと
- 区分所有建物(マンション)は対象から外れる扱いがあること
- 条文の要件はこれだけではありません。使えるかどうかは税務署か税理士に確認してください
相続人の人数で控除額が変わる
見落とされやすいのがここです。租税特別措置法第35条第4項は、その家屋を相続した相続人の数が3人以上である場合、「三千万円」を「二千万円」と読み替えると定めています。
つまりきょうだいが3人で実家を相続すると、控除の枠が1,000万円減ります。
譲渡所得2,500万円で、相続人の数だけを変えてみる
- 相続人が2人(控除3,000万円)2,500万円 − 3,000万円 → 0円
- 相続人が3人(控除2,000万円)2,500万円 − 2,000万円 → 500万円
- その所得税(500万円 × 15%)75万円
相続人が1人増えただけで、所得税が75万円発生します。誰が相続するかを決める前に、この数字を家族で共有してください。
放置すると土地の税の計算が変わる
売らずに持ち続ける場合も、放置には値段が付きます。地方税法第349条の3の2は、住宅用地について固定資産税の課税標準を引き下げています。
住宅用地の特例(地方税法第349条の3の2)
| 区分 | 課税標準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 価格の6分の1 | 第2項 |
| それ以外の住宅用地 | 価格の3分の1 | 第1項 |
| 勧告を受けた特定空家等・管理不全空家等の敷地 | この特例から除かれます | 第1項のかっこ書き |
同条第1項のかっこ書きは、空家等対策の推進に関する特別措置法にもとづく勧告の対象となった管理不全空家等・特定空家等の敷地を、住宅用地から除いています。
家が建っているだけで6分の1になっていた土地が、勧告を受けると、その6分の1が外れます。「壊すと固定資産税が上がるから、そのままにしている」という判断が、そのままにしていても上がる方向に変わったということです。
放置で起きること
庭木が伸びて隣家に越境している
郵便受けがあふれている・窓が割れている
遠方に住んでいて年に1回しか行けない
誰の名義か分からない
12か月のカレンダー
4つの期限を、時間の順に並べます。片付けをどこに置くかが見えます。
相続開始からの順番
| 時期 | やること | 片付けとの関係 |
|---|---|---|
| 〜2週間 | 死亡届・年金・健康保険などの窓口手続き | まだ片付けに入らなくてよい |
| 〜3か月 | 相続放棄するかを決める(民法915条1項) | 売る・捨てる前に、査定額だけ聞いておく |
| 3〜6か月 | 遺産分割の話し合い/相続人の確定 | 実家に何があるかが分かっていないと決まらない |
| 〜10か月 | 相続税の申告・納付(相続税法27条1項) | 売って納税資金にするなら、ここまでに売る必要がある |
| 10か月〜 | 片付けの実行・家財の処分 | ここが本番。3LDKで17万〜50万円 |
| 〜3年 | 相続登記(不動産登記法76条の2) | 名義が変わらないと売れない |
| 3年を経過する年の12月31日 | 空き家の3,000万円控除を使って売る | 取り壊しか耐震改修が要る。中が空でないと着手できない |
この表のとおりに進めると、片付けの山場は「相続税の申告が終わってから」ではなく「3か月以内に査定だけ受けて、10か月までに方向を決める」になります。
どこから手をつけるか
先に順番だけ置きます。この順にすると、費用が下がって、捨てたあとの後悔が減ります。
実家の片付けの順番
| # | やること | なぜこの順か |
|---|---|---|
| 1 | 家中から「売れるもの」だけを一か所に集める | 部屋ごとに片付けると、値の付くものが分散したまま処分される |
| 2 | まとめて無料査定を1回受ける | 金額が出る。売らずに聞くだけなら、相続の「処分」に当たりません(後述) |
| 3 | 残す物・譲る物を決める | 金額が分かってから決めたほうが、家族で揉めにくい |
| 4 | 残りを処分する | 1で抜いた分だけ量が減るので、業者の見積もりが下がる |
業者の費用は間取りごとに幅があります(3LDKで17万〜50万円)。間取り=量なので、量を減らすことが費用を下げる唯一の方法です。
1で集めるものは、決まっています。着物・帯/切手・古銭/骨董・美術品/貴金属・宝石/ブランド品/古い家電や工具。「汚れているから」「古いから」で除外しないでください。古いほど値が付くものがあります。
逆に、絶対にやってはいけないのが「とりあえず全部業者に任せる」です。処分する側は、売れるものを選り分ける義務を負いません。値が付くものごと、量として運ばれます。
売る前に。3か月を過ぎると戻せません
亡くなった方の遺品なら、片付けより先にこれです。民法は「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」は単純承認をしたものとみなすと定めています(民法第921条第1号)。単純承認とは、プラスの財産も借金も、まとめて引き継ぐことです。
そして期限があります。民法第915条第1項は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない」としています。
実家の遺品に手をつける前に、この3つを分ける
| やること | 相続の扱い | まずいことになる場面 |
|---|---|---|
| 売る・捨てる・譲る | 「処分」に当たり得る(民法921条1号) | あとで借金が出てきても、相続放棄ができなくなる |
| 査定額を聞くだけ | 処分ではない | —(金額を聞いてから断れます) |
| 傷まないように保管する | 保存行為として921条1号のただし書で除かれています | — |
条文:民法第921条第1号「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない」(e-Gov法令検索で2026年9月18日確認)。個別の当てはめは事案によります。金額が大きい場合や借金の有無が分からない場合は、3か月以内に弁護士・司法書士へ。
「よく分からないから、とりあえず捨てた」がいちばん危ない。捨てる行為も処分に当たり得ます。価値の分からないものを先に捨てると、金額が分からないまま相続を確定させたことになります。
3つの選択肢
先に「捨てる」の値段を置きます。ここを知らないと、3つを比べられません。片付けを業者に頼んだ場合の相場は、公表されているものでこの幅です。
実家の片付けを業者に頼んだときの費用相場
| 間取り | 料金相場 | 間取り | 料金相場 |
|---|---|---|---|
| 1R・1K | 30,000〜80,000円 | 2LDK | 120,000〜300,000円 |
| 1DK | 50,000〜120,000円 | 3DK | 150,000〜400,000円 |
| 1LDK | 70,000〜200,000円 | 3LDK | 170,000〜500,000円 |
| 2DK | 90,000〜250,000円 | 4LDK以上 | 220,000〜600,000円 |
出典:遺品整理の比較サイト「みんなの遺品整理」が公表している間取り別の料金相場(2026年9月18日確認)。実際の金額は物量・階数・エレベーターの有無・地域で変わります。粗大ごみを自分で自治体に出す場合は品目ごとの手数料になり、これより安く済むかわりに手間と日数がかかります。
1. 捨てる
最も早い。ただし上の表のとおり、量が多いと十万円単位でかかります。「捨てるにもお金がかかる」ことは意外に知られていません。着物や骨董は自治体によって処分方法が決まっていることもあります。
2. 譲る・寄付する
気持ちの面では収まりが良い。ただし受け取る側にも負担があります。着物は保管に手間がかかるため、断られることも珍しくありません。
3. 売る
価値があれば現金になり、なければ引き取りだけしてもらえる場合もあります。まず査定を受けてから、他の選択肢を考えるのが順序として合理的です。
ポイントは「査定=売ること」ではない点です。金額を聞いてから断ることができます。
まず価値があるかどうかだけ、無料で見てもらう
査定は無料で、その場で断ることもできます。捨てる前の確認として使えます。
- 査定は無料です
- 出張査定に対応しています
- 査定後に断ることもできます
売れるものはこれ
着物:作家物、産地物(大島紬・結城紬・加賀友禅など)、証紙が残っているもの。証紙は非常に重要なので、探してください。
帯:着物より価値が付くことがあります。
切手:シートのまま残っているもの、記念切手、古い年賀切手。使用済みでも価値があるものがあります。
骨董・古美術:茶道具、掛軸、陶磁器、象牙・べっ甲の細工物、古い硬貨。箱書きや共箱があると評価が変わります。
ブランド品・時計・貴金属:バッグ、財布、腕時計、指輪やネックレス、地金。実家の片づけで最も見落とされる分野です。着物や骨董を扱う業者が、ブランド品や宝石まで同じ強さで扱うとは限りません。箱・保証書・鑑定書が残っていると評価が変わります。壊れている時計や、片方だけのイヤリングでも、素材で値が付くことがあります。
その他:古い着物用の小物、和装バッグ、かんざし。
ブランド品・時計・宝石は、扱っている業者に見てもらう
着物や骨董と、ブランド品や宝石とでは、得意な業者が違います。出張買取なら家から出さずに見てもらえます。査定額に納得できなければ断ることができます。
- 査定は無料です
- 出張査定に対応しています
- 査定後に断ることもできます
よくある失敗
「四十九日が過ぎてから」と聞いて、そのまま待つ
四十九日は法律上の期限ではありません。相続放棄は3か月、相続税は10か月です。待っているあいだに3か月が過ぎます。
価値が分からないまま、とりあえず捨てる
捨てる行為も民法921条1号の「処分」に当たり得ます。金額が分からないまま相続を確定させたことになります。
3年あると思って、着手を後回しにする
空き家特例の期限は3年を経過する日の属する年の12月31日です。年末に亡くなった場合はほぼ丸3年しかありません。片付けに半年、売却に半年かかります。
誰が相続するかを、中身を見ずに決める
相続人が3人以上になると控除が3,000万円から2,000万円に下がります(措法35条4項)。譲渡所得2,500万円なら所得税75万円の差です。
「壊すと固定資産税が上がる」と思って放置する
勧告を受けた管理不全空家等・特定空家等の敷地は、住宅用地の特例から除かれます。放置していても上がる方向になりました。
名義を確かめないまま売却の話を進める
相続登記が済んでいないと売れません。3年の期限があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料です。
部屋の順に片付ける
値の付くものが分散したまま処分されます。種類ごとに家中から集めてから査定を受けてください。
全部まとめて業者に任せる
処分する側は、売れるものを選り分ける義務を負いません。値が付くものごと量として運ばれます。
よくある疑問
実家の片付けは、いつまでにやればいいですか。
四十九日を過ぎてからでいいと聞きました。
空き家の3,000万円控除は、いつまでに売ればいいですか。
きょうだいが3人います。控除額は変わりますか。
相続登記をしないと、どうなりますか。
家を壊すと固定資産税が上がると言われました。
遠方に住んでいて、年に数回しか行けません。
査定を受けると、売らなければいけませんか。
相続税の申告が終わってから片付けを始めてもいいですか。
片付け費用はいくらかかりますか。
査定前に確認すること
1. 相続財産かどうか。亡くなった方の遺品の場合、相続人全員の同意なく処分すると後で問題になります。まず確認してください。
2. 証紙・箱・付属品を探す。着物の証紙、骨董の共箱、鑑定書。これがあるかないかで評価が変わります。
3. 家族の意向を聞く。思い入れがあるものかもしれません。処分してからでは戻せません。
4. 査定の方法を選ぶ。出張・持ち込み・宅配。量が多いなら出張が現実的です。
進め方
①まとめる(着物・帯・切手・骨董など、種類ごとに)
②証紙や箱を探す
③無料査定を申し込む(出張なら家から出さずに済みます)
④金額を聞いて判断する(断ってよい)
⑤売らないものの処分方法を決める
この順序なら、「価値のあるものを捨ててしまった」という後悔が起きません。
出張査定で、家から出さずに見てもらう
量が多い場合は出張査定が現実的です。査定は無料で、断ることもできます。
- 査定は無料です
- 出張査定に対応しています
- 査定後に断ることもできます
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一次情報の確認先
このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。